シード番組で得をする人、 損をする人

シード番組で得する人、損する人
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シード番組では大抵A級レーサー、もしくはそれに準ずる力量のもった選手が1号艇に組まれています。朝一のレースや6レース前後に組まれることも多いのですが、これは上記による有力な選手同士が最初から対戦することのないようという配慮もなくはないのですが、それよりも1号艇にA級レーサーを組むことで本命レースにしてお客さんに勝ってもらいやすくして、舟券を朝から買ってもらおうというものです。

アドバイザー不在の場外は衰退する

仕事で地方のBTSに行くと、必ずボートの知識自慢をする人たちがいます。都会で働いていたときにボートを覚えた人たちで、舟券の実戦経験も豊富です。実戦経験を元に,ビギナーのアドバイス役もやってくれます。そうした人たちが多い所は、ファンに任せておけば問題ありません。

競輪の場外発売場や、パチンコ屋が近くにあるようなBTSでは、競輪好きやパチンコ好きの人が「ボートもやってみよう」とやってくることも少なくありません。先生役がいない所もあります。その場合は舟券作戦を立てる材料がないので出目に頼って買う人も多く、成績は良くありません。的中しないので購入金額が減少、点数を絞ればますます当たらなくなるという悪循環に陥った末、姿を見
せなくなります。

本場とBTSの間にある回収率格差

そんな地方BTSの関係者から聞いた話です。回収率の話になりました。購入金額の25 %が控除さ
れるポートでは、購入額の75 %が購入者に戻らなければなりません。
ところが、そのBTSでは60 %くらいが続いていると言うのです。15 %は他のレース場やBTSに
流れているということです。「住之江は、本場発売だと回収率100%を超える日があるそうです。
羨ましい限りです。とにかく舟券が当たってくれないことには、資金も回りませんからね」。実際に、SGで地元のスター選手が優勝すると本場の払戻金額が増えるという話はありました。

そのような場合を想定して、あらかじめ払い戻しの資金を増やしておくそうです。
「住之江の回収率100%超え」の理由は、住之江のファンが他のレース場に手を出さないからで
しよう。住之江本場だけに絞ることで、モーターの動きを把握できます。選手頼りではなく、選手とモーーターを総合的に判断する視点ができているということです。モーターの動きを把握していれば、勝負できるレースか、見送ったほうが良いレースかの判断がつきます。予想屋さんの存在もあるでしょう。

日常的にレースを見ることで、的確なモーター相場ができあがります。本場の指定席に入る人には大
口客が多く、無駄な舟券を買いません。そうした積み重ねの結果、回収率100%超えが可能になるのです。1つのレースに対するモーターを含めた舟券情報量の差が、回収率格差の原因です。

SGの売上不振の理由は多場発売に

 

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SGとはスペシャルグレード。全レーサーの目標。G1、G2、G3のさらに上の格付けをされているレースのこと。ボートレースクラシック、ボートレースオールスター、グランドチャンピオン、オーシャンカップ、ボートレースメモリアル、ボートレースダービー、チャレンジカップ、グランプリの8つ。ビッグともいわれ、どのレースも舟券が全国で場外発売される。

多場発売で一番被害を受けているレースは、SGです。SGではあらかじめ売上目標額を公表しま
すが、最近はなかなか達成できません。
売上の伸びない要因の1つは、多場発売になってSGを実況するモニターの台数が減っているから
です。1場だけなら全部SGに使えますが、多場発売ではモーニング場に取られ、女子戦に取られ、
地元場の放送に取られます。これがボディーブローとして効いている印象です。
SG開催期間中は、ほかの開催を自粛すれば良いのではという意見もあります。ただ、その場合は
SG直後に開催が集中して人の奪い合いになります。多場発売のほうがトータルでの売上は良いとい
うことが実証されています。

株をやる人はシード番組好きが多い

シード番組を始めたのは三国です。2連単から3連単の時代になって舟券を的中させることが難し
くなりました。30通りだったものが120通りになるのですから、的中率が下がるのは当然です。そ
れを何とかしようと思い立ったのが、1号艇に実力上位の選手をシードして、2~6号艇にB級を並ぺる「おはよう特賞」でした。その後に全国的な広がりを見せ、今はほとんどのレース場でシード番組が組まれています。

シード番組は軸になる選手がわかっているので、3連単でも配当が安くなります。「こんな安い配
当じゃ手を出せない」と敬遠する人もいますが、それでもかなりの売上があります。モーニング開催
を行っているレース場ではシード番組は当たり前。午前中にシード番組を並べて、1日の売上の半分
以上を稼ぎます。特に進入固定のシード番組の1コース1着率は80 %を超えており、スポーツ新聞の
鉄板マークと同じくらい軸艇信頼のレースで売上も好調です。

こうした堅いレースを誰が買っているかといえば,株をやっている人たちです。格差社会を肯定す
るわけではありませんが、「あるところにはある」ものです。大手の証券会社が勧めるファンドを買っている人は、配当金として毎月一定の金額を振り込まれてくると言います。ダウ平均が上がるか下がるかに投資するお客さんもいます。前日から動いた率を3倍した金額が配当金になるそうです。

例えば、株が前日より3%上がったとします。その人が預けている金額の3%×3倍=9%が配当
金になるとのこと。予想どおりにいけば、黙っていてもお金が入ってくる仕組みです。お金を動かす
ことが趣味のような人たちなので、「確実に儲かる」シード番組を買うわけです。

そういう人たちは「10万円ずつ3点買って, 40万円が戻ってくれば十分」という考え方をします。
どんなレースだろうが資金が増えれば良いのです。情報の大切さを知っているからスポーツ新聞の鉄
板マークも見るし、プロ的な人たちの意見にも耳を傾けます。的中して資金を増やして終了、ほかの
レースには手を出しません。

そんな人にとって、多場発売は大歓迎だそうです。レースが多ければ多いほど、選択の幅が広がる
からです多くのレースに手を出すのではなく,本当に資金を増やせそうなレースを探せるとのこと
でした。

 

シード番組を崩す「不安な1号艇」

的中を誘導するシード番組にも、番組の死角のようなものもあります。シード番組で高配当が出る
のは、1号艇でインに入った選手が負けるからです。シード番組で人気になる1号艇の勝敗を判断す
る基準を持っていれば、本命でも高配当でも的中させることができます。負けるパターンがわかって
いれば、高配当も取りやすくなります。

シード番組の基本は、1号艇にA級、2号艇から外にB級を配置するパターンです。1号艇のA級が信頼できる本命か、不安な本命なのか。シードしている以上は信頼できるはずなのですが、条件次第でその信頼度は揺らぎます。不安な本命になってしまう条件を知っていれば、シード番組の裏に潜む高配当を見つけられます。
モーターが出ていないA級、スタートが決まっていないA級など、負ける要素があるA級は多いものです。それを見抜く力が必要です。

シード人材不足に陥るシリーズ後半

シード番組の初日と最終日では、初日のほうが番組マンの期待どおりの結果が出る可能性が高いと
言えるでしょう。
理由は、人材不足です。シード番組は初日から最終日まで毎日組まれますが,シリーズ後半になる
と、シードする先週が不足してき変す。一般競走の斡旋人数はだいたい40名から45名です。

17年11月の桐生5日開催を見てみましょう。出場選手は45名で、A1級7名、A2級11名,B1級24名、 B2級3名というメンバー構成でした。桐生にはシード番組が3つあり, 1Rは4号艇にA級。6Rは1号艇にA級, 8Rでは1号艇と5号艇にA級を組みます。シード番組と銘打っている以上はA級をシードしなくては意味がありません。1日あたり4名のA級が必要ですが、同じ選手を何度もシードするのも不公平です。
さらに、最終日には優勝戦があります。このシリーズでは5名のA級が優勝戦に進出しました。
この5名は優勝戦1回走りなのでシード番組には出せません。最終日のシード番組にいるのは「優勝
漏れ」したA級です。予選落ちしたA級はもちろん、選抜戦に出るA級も高額レースの前に無理はしませんから,負ける確率が高くなります。

期末は級別そのものが信用できない

級別そのものの信憑性が下がるのが、期末です。ポートの級別審査期間は年2回(前期:5月~10月,後期:11月~4月)で、適用期間は前期が1月~6月、後期が7月~12月です。
級別審査の期末が近づくと、出走表ではA級でも、実は来期B級落ちが決まっている場合があります。そんな弱いA級は弱いレースしかしません。それでもシード番組で1号艇というだけで1番人気になります。

逆に,出走表では3点勝率のB級なのに近況勝率は5点台という、強いB級もいます。レースを覚え出した若手に多いパターンです。SGで活躍しているルーキー仲谷颯仁は「自分がB級の頃、シード番組の中、外枠に組まれたときは『一発やってやろう』と思っていた」と話していました。こんな攻める気マンマンの強いB級が外にいたら、弱いA級はひとたまりもありません。

新級別が決まってから適用までの2ヵ月間も、シード番組は荒れます。新級別がB級でも、まだA級選手として扱われるからです。現在の級別ではなく、新級別や新勝率を見ないとだまされます。

 

選手ではなく、モータをシードする

シードされるのは選手ばかりではありません。16年7月の浜名湖は勝率の低いモーターばかりの低調機シリーズ」に、当時エース級だった2号機、25号機、49号機をぶつけてきました。
シード番組ならぬ、シードモーターです。

そのシリーズでは低調機を手にした服部幸男が①④⑤①③②④④準2優3と辛うじて予選と準優を
通過したのに対し、25号機を引いた橋本年光は②①②①①②①⑤準1優6という成績でした。2号機
と49号機を引いた選手も優出し、良いモーターを手にしないと勝てないことを証明したシリーズでし
た 。SGで何度も優勝したような選手でも、悪いモーターに当たると手こずる時代なのです。
そのことは選手も十分心得ており,「良いモータ1を引いたときに稼ぎ、
ときに我慢する」というスタイルに変わってきています。

 

元選手の解説には舟券の視点がない

場外発売場やBTSで放映されるレース中継ですが、そのシステムは意外と知られていません。
レース場で撮影された映像はまず、東京に集約されます。そこから配信会社を通じて全国の場外発
売所へ送られます。配信会社で有名なのは、日本レジャーチャンネル(JLC)です。 CSスカパー!
に加入すれば自宅でも視聴できます。電話投票のファンだけではなく、レース場やBTSで前売舟券
を買って、自宅でゆっくりレースを観るといった人もいます。スマホでも視聴が可能になっています。
また、最近では「レース映像とオッズの垂れ流しだけではいけない」と、ピット情報や1周タイム、
レース解説などを流すレース場が増えています。シード番組と同じく、多くの情報を提供することで舟券を買いやすくするためです。
選手から情報を聞き出すのは、元選手です。実戦経験を生かした元選手の解説は評判が良いですが、
舟券を買うには、少し足りないものがあります。「舟券の視点」が欠けているのです。

出目を当てても儲からなければ負け

元選手の解説が消化不良なのは、舟券作戦を立てる場合、必ずしも展開予想と舟券予想が一致するわけではないからです。
舟券作戦を立てる場合、まずは6選手の実力とモーターの力関係を把握します。その中には攻め方
も入っています。そのうえで進入コース、スタートの隊形、1マークの動きをイメージしていきます。
これが展開予想です。誰が勝って、誰が負けるかを予想するのが展開予想なので、決定打がなければ、ぼかすこともできます。元選手の解説は、ここまでなら合格点です。

ところが、その先は数名の選手をピックアップするだけで「実際にどういった舟券を買えば良いの
か?」というアドバイス、舟券予想がほとんどありません。ボックスで買えば良いのか、1着軸を固
定した方が良いか、購入金額に変化をつけなくて良いのか、ここらのアドバイスが欠落しています。

舟券予想は、勝つか、負けるかの二択しかありません。いくら舟券が的中しても、購入点数を増や
しすぎて取りガミになれば、それは負けなのです。だから、3連単のオッズが500円なのに①ー流しー流しの20点買いを薦めるのはいただけません。そのとおりに買って当たっても収支はマイナス
ですから、負けを薦めていることになります。もし、①ー流しー流しを推奨するなら「1番人気は500円ですが、2着と3着争いは大混戦です」といった解説が必要ですし、そのような混戦状況で初めて成立するものです。ただ的中させたいがために何十点も出すのは、反則です。

元選手はレースのプロですが、現役時代は舟券を買えません。舟券に関してはビギナーだと思っておいたほうが良いでしょう。