出力低減モーターで何が変わったか

ボートレースはモーター出しとの戦い

ボートレース出力低減モータ

内有利&携次第は技量向上の結果

6艇によるワンパターンレースがボートレースです。パターン化しやすいというメリットがある反面、配当が安いというデメリットもあります。最大18頭で走る中央競馬や、9車立ての競輪と比較すると、どうしても配当が安くなってしまいます。そういった弊害をなくそうと、ボートレースには勝者の予想を難しくする仕掛けが施されています。

その最たるものが、モーター抽選です。枠なり進入が多くなったといっても、コース取りは流動的です。フライングスタート法もレースの予測を困難なものにします。番組編成も同じです。選手が勝ちやすくすることも、勝てなくすることも自由自在です。レースは単純でも、ギャンブルとしては魅力的です。「実力が互角ならモーター次第」というボートレースの格言があります。SGやG1のようなレベルの高いレースでは、その傾向が強くなります。

スタートを取り上げてみても、年々そのタイミングが早くなっています。かつては平均STが0.20を切れば記念級だと言われていました。97年の『スポニチガイドブック』には、全選手のデータが載っています。「花の69期」と呼ばれた69期生の中で、平均STでコンマ20を割っている選手は23名中、
三嶌誠司(O. 17 )、
福田雅一 (O. 18 )、
太田和美(0 . 18 )の3名しかいません。

69期の最近のスタートを調べると、選手数は21名に減っていますが、平均STで 20を割っている選手は16名もいます 選手募集の基準が変わった106期生の成績も調べてみました。『2016年後期ファン手帳』のデータを調べると、21名中15名がO. 20を割っています。

スタートの技術が進化すると,スタートが揃うようになります。それを崩すとすれば、モーターの性能差しかありません。内有利な展開が多くなるわけです。
スタートだけでなく、実力そのものが接近しているSGやG1では、モーターの仕上がりが勝敗の鍵を握るようになります。そのため、最近では選手中心の展望記事と同じように、モーターの展望記事や、地元の記者が推奨するモーターをピックアップした記事が増えてきました。

 

モーターの気配は、絶えず変化する

 

オートレースのモーターは1年間使用します。1節ごとに抽選で選手に割り当てられますが、選手によって調整方法は違います。出足型のモーターに伸びが欲しい選手が乗ることや、整備経験のない新人がエース機に乗る場合もあるわけです。部品交換をすれば、いくら実績があるモーターでも違ったものになりますし、調整を間違えば本来のパワーを引き出せなくなりはす。モーターの調整は、プロペラを含めての調整です。乗り手によって、絶えず動きが変化すると考えておいた方が良いでしょ

モーターの仕上がり具合は、「気配」という、何ともあいまいな言葉で表現されます。「モーター実績で十分ではないか」という声もありますが、パワーのあるなしが必ずしも数字に現れるものではありません。元スポニチ記者の西中準さんは、『スポニチガイドブッ之の中で「評価」とい2言葉を使っています。「評価」だと少し堅い感じがするので、「気配」が主流になったのかもしれません。気配とは「何となく感じられる様子」だそうで、感じ方は人それぞれです。
一番大事なことは、レースの直前にモーターが動いているかどうか、それを見極められるかどうかなのです。

現行モーターは最初から優劣がある

 

出力低減モーター(ヤマト331型)になってから、モーターの性能差が大きくなりました。「戸田の44号機」「浜名湖フォーティーセブン( 47号機)」など、
今はどのレース場にもアイドル級の人気を誇るスーパーモーターがあり、誰が乗っても好成績を残します。

16年4月から1年使用した浜名湖のWエース, 2号機と25号機を例に取ってみましょう。2号機は31節使って12優出3優勝、勝率6 . 48、3連率67 . 8%、平均展示順位は1 . 62位でした。舟券の貢献度も高く、2連単の回収率は136%もありました。

初下ろし節で魚谷香織が優勝した25号機も強烈で、5月企業杯では「モーターが出すぎて」平尾崇典がフライング。
6月のイースタンヤングで平田健之佑、一宮稔弘の連続優勝を含め6場所連続で優出しました。29節使って13優出5優勝、勝率6 . 72、3連率71 . 2%、平均展示順位は2.2位です。

この2基に共通するのは、展示タイムの良さです。2号機は展示1番時計を連発、25号機も伸びの良いモーターでした。伸びだけではレースに勝てませんが、展示タイムが良いというのは、行き足から伸びにかけてが良いということです。スタートで先手が取れる上に、1マークで主導権を握ることができます。だから誰が乗っても好成績を残します。

展示1番時計を連発しているモーターが好成績を残すのは、浜名湖だけではありません。びわこの65号機は16年6月から1年間で30節走って11優出5優勝、平均展示順位は2。36位、回収率は100%を超えました。16年6月から1年間使用した戸田の44号機は1年間で8回優勝して、モーターの通算優勝記録を塗り替えました。
強烈なモーターがあるということは、逆に手の施しようがないボロモーターもあるということです。一般競走で、優勝候補がそんなポロモーターを手にしたら、どうなるのでしょうか。

たった1つの部品で崩れた選手相場

17年4月以降に導入された新モデルのモーターは、クランクシャフトが改良されてい孝。スロー時のエンストを防ぐため、クランクシャフトのプーリー(弾み車)を重くしたそうです。多摩川の整備士さんのインタビューを聞いて、初めて知りました。

プーリーを変更したことは選手にも連絡されませんでしたが、以前から選手の間でかなり噂になっていました。『マンスリーBOAT RACE』の石井編集長が多摩川の整備士さんに取材を頼んだところ、「村田修次が詳しいから彼に聞いた方が良い」と言われたそうです。

村田修次の話では「プーリーを重くしたことで、レバーを落としたときの体感が違ってきた。
減速が今までよりも遅れ気味になるので、プロペラ調整などが変わる。対応が遅れている選手は、モーター調整やターンで迷路に入っている」とのことでした。悪いモーターは手の施しようがない、とも話してくれました。

新モデルになって、良いモーターと悪いモーターの格差はさらに広がりました。新モデルへの対応が遅れている選手も勝率が下がっています。選手の勢力図の変化には、こうしたモーター事情も要因となっているようです。

ボートレース出力低減モータ2