スタート展示、周回展示は情報の宝庫

展示航走は6選手の力関係が見える

 

 

ボートレース展示航走の見方

 

レース前に行われる展示航走は、直前のモーターの仕上がり状態をチェックするうえで見逃せません。
展示航走にはスタート展示と周回展示があります

スタート展示は、本番レースと同じように大時計を回してスタートをします。スタート展示の後にレースコースを2周回するのが周回展示です。このときに展示タイムを計測します。展示タイムの計測方法は、手動計測、自動計測、ビデオ計測など、レース場によって違いがあります。信頼度の高いのはレーザー光線を使った自動計測です。

周回展示は全力でブン回す選手や、無事故第一で走る選手など、各選手の考え方や個性が出ます。比較するためには、選手のクセのようなものを頭に入れておかなければなりません。その点、スタート展示は全員が全速に近い状態でスリットに飛び込むので、6選手のモーターの動きを簡単にチェックできます。

スタート展示の観察ポイントは2つ

 

スタート展示は、ピット離れ、コース取り、スタートと、本番レースのと同じことをやってくれます。本番レースのリハーサルといっても良いでしょう。前付けに来る選手がいて、コース取りが乱れるようなレースでは、本番での進入コースの参考にできます。スタートで先手を取る選手は誰か、1マークで主導権を握るのは誰かを、スタート展示から読み取っていきます。

スタート展示の進入コースが決まってからは、
①スタートラインまでの6艇の動き
②スタートをしてからの6艇の動き

が、観察のポイントです。進入コースが決まったら、
1コースから順番に進入コースを素早くメモしてください。

■スタートまでの加速度をチェック

メモが終わったら、スタート展示に目を戻します。加速状態をチェックするためです。肩の力を抜いて、目を細めて見ると良いでしょう。
特定の選手を重点的に見るのではなく、6艇すべてを視野に入れてください。

そうすると、スピードが乗るにしたがって、前の方に出てくるボートがあります。スタートライン近くまではボートの舳先を見ます。スッと前に進んでくるボートの方が良く取り残される感じのボートは加速が悪いという判断をします。加速の良し悪しをチェックしたら、○×でも、←→でも良いので、自分なりに記号を作ってメモしておきます。すぐ水面に目を戻せるよう、簡単な記号を使ってください。

 

2スリット後に伸びる選手は買える

スタートラインを過ぎてからは、ボートの後ろ姿を追う形になります。レース場にいるなら、できる限り大時計の近くで観察するのが良いでしょう。できるだけ高い位置からの方が、全体の動きが目に入るのでオススメです。

今度は視線を舳先ではなく、ボートの艇尾に合わせます。そうすることで隣同士のポートの動きが比較しやすくなります。
前にいるボートに追いつくポートは、伸びがあると判断できるので○です。

逆に引き離されてしまう選手は、パワー劣勢でずり下がるポートので、xをメモしておきます。「1○、02× 3 4○、56×」という感じです。良い場合は進入コースの上、悪い場合は下に印をつけると、よりわかりやすいと思います。

 

 

 

■スタート展示の足し引きで修正する

6選手のモーターの加速状態や伸びはスタート展示で比較できますが、もう一つチェックしなければならないのが、スタートタイミングです。選手に「どういった考えをして、スタート展示に臨んでいるのか」と聞くと、大きく分けて3つのパターンがありました。

①タッチスタートを狙って、全速でスタートラインを通過する
②本番のスタートを想定して、それに合わせてスタートラインを通過する
③他の選手の動きを観察して、本番レースの作戦を立てる

大半の選手は①の方法でスタート展示をしています。そこでモーターの調子なども判断しているようです。
スタート展示が終わると、すぐにスリット写真が画面に出ます。レース場なら大型映像、JLCやBTSは実況画面です。
ほとんどの選手がタッチスタートかフライングです。スタート展示でフライングが多いのには、理由があります。

選手はスタート展示をするときは、自分の選択したコースから、本番のスタートを想定してレバーを握って加速します。タッチスタートを
狙って行く選手も多いようです。一度レバーを握ると、そのままスタートラインへ突っ込むので、全速でのスタートになります。モーターが出ていればフライングです。

展示航走が終わると、選手は本番待機室で本番レースを待ちます。待機室にはスタート展示のスリット写真が張り出され、選手はそれを見てスタート勘を修正します。本番では少しでも早いスタートを、フライングをしないように切るにはどうすれば良いかを考えます。レース場によっては、電子スリットの画面を選手が拡大して見ることができるようになっており、正確なスタートがわかるようにしています。

例えば、スタート展示でタッチスタートをした選手がいたとしましょう。スタート展示と同じようなタイミングでレバーを握っていけば、フライングをする危険性があります。そこで、起こしのタイミングを遅らせるか、起こし位置を後方にズラします。スタート展示から引き算をするわけです。

同じような位置から,じようなタイミン グでレバーを握って行って、途中で一度レバーを放すというやり方もあります。大きく修正するよりも小さな修正の方が精度が上がります。スタート展示で1艇身もフライングをした選手は、スタート勘の修正が難しくなり、本番では思い切ったスタートが切れません。

 

■展示が良くても本番は実力どおりに

スタート展示のスリット写真を見る場合、本番レースではスタート展示と同じスリットにはならないと思ってください。
選手は何かしらの修正をして本番レースに臨むので,修正の度合いを計る必要が出てきます。

目安になるのは、選手の平均STです。平均STの遅い選手は、スタート展示でどんなに思い切ったスタートをしていても、本番ではスタートを行きません。ただし、スタート展示で選手の勘どおりのスタートが切れたならば、本番も自信を持って臨めます。全速でスタートをするので、勢いがついて、スタートしてから伸び気味になるものです。

女子レースも注意が必要です。スタート展示で大きく立ち遅れる選手がいます。しかし、本番では他人について行くので、人並みのスタートを決めてきます。平均STとスタート展示の勢いを加味しながら、本番のスタートをイメージすることが大切です。

「横一線ならイン有利」「中へこみなら捲りが有利」というオートレース格言を思い出してください。スロー勢から1着者が出るのか、ダッシュ勢から1着者が出るのかを読むだけで、舟券作戦の方向性が定まります。

追い風が強ければ、スタート時に後ろから押される形になるので、スタートの起こしのタイミングを遅らせなくてはなりません。モーターが出すぎている場合も同じです。修正の幅が狭いほど、本番のスタートも決まりやすくなります。

③のスタートをする選手については、数多くのレースを見て、見つけるしかありません。艇団よりも遅れ気味のスタート展示をするタイプは、関東の選手に多く見られます。女子の中にも何名かいるようです。

 

 

 

■展示航走時の「暴.流·外」はNG

スタート展示が終わると1号艇から順次、展示航走に入ります。レースコースを2周回して、2周目バックストレッチで展示タイムを計測します。レース場によっては半周タイム、1周タイムなどを独自で計測、公表しており、周回展示のデータ化が進んでいます。これまでのフィーリングで展示航悩走を見る時代から、タイムデータで判断する時代へと進んでいます。タイムデータでモーターの仕上がり状態の判断する選手も多いようです。

周回展示のターンを見る場合,「ターンが暴れる」「ターンが流れる」「ターンマークを外す」の3点に注意をして見ることです。特に出力低減モーター(ヤマト331型)になってから、ターンの入り口の挙動が変わっています。

ターンには、レバーを一度も放らずに旋回する全速ターンもありますが、ほとんどの選手がターンの直前にレバーを放ります。滑走しているポートを一端、水に沈めて、ターンのきっかけを作ります。ハンドルを切り、ポートが安定してからレバーを握って行きます。そのときにモーターに力がないと、水の抵抗に負けてボートが暴れます。その度合いが、馬力の落ちた出力低減モーターでは顕著です。

ポートの右サイドが水をしっかりとつかんでいない状態でレバーを握ると、ポートはターンマークを外すだけでなく、大きく横流れしてしまいます。「ターンで暴れるかも」「流れるかも」という不安を抱えたままレースに臨めば、思い切ったターンができずレースになりません。それを見抜くことも周回展示では重要です。

■ターンの角度で操縦の巧拙がわかる

それに、ターンに入るときの角度のチェックも追加したいと思います。レース場で見る展示航走とBTSなどで映像を見るのとでは、かなり違いがあります。レース場では全体の勢いのようなものを見られますし、映像ではターンに特化して見ることができます。デジタル映像になったことで、しぶきの上がり方、ターンの航跡の残り方までわかるようになり、周回展示のターンがより鮮明になりました。

最近、選手が「乗り味」「乗り心地」「掛かり」といった言葉を盛んに使います。今の出力低減モーターは伸びないので,ターンの攻防が熾烈になっています。そのときに必要なのは「自分の思ったところへポートが行く」ことです。ボートの舳先がターンマークに素早く向けば、レバーを握るタイミングも早くなります。その分、他の選手よりも早く、自分の行きたいところへ向かえるわけです。そんな選手を周回展示で見つけられれば、舟券推理の大きな力になります。

 

■レース場の独自タイムを活用しよう

周回展示の2周目バックストレッチ150 m区間を計測したものが、全レース場で公表されている展示タイムです。ほとんどのレース場では, スリット裏から2マークまでの150 m区間を計測しています。伸びの領域なので、レースに直接は関係しないタイムだと言われてきました。データを調べても、展示1番時計の1着率は25 %前後で、頼りにできません。そこで、最近では実戦に役立つタイムを独自で計測、公表するレース場が増えています。

桐生では半周タイム、まわり足タイム、直線タイムを公表しています。平和島、徳山、下関、若松、芦屋、大村は1周タイムや、まわり足タイムなどです。こうした独自のタイムを公表するレース場は、今後さらに増えることでしょう。

半周タイムや1周タイムなど,ターン部分を含んだタイムには, レースに直結する舟足が反映されます。特にターンの攻防が激しくなっている現状では、ターンに関するタイムが重要です。1コースから攻める選手が、半周タイム、1周タイムで1番時計をマークしていれば軸艇から外せません。コース別データと併用して見れば、さらに舟券の精度が上がります。

1コースで半周、1周タイムが1番時計でない選手は, モーターが出ていない選手です。そうしたときは、コースデータに振り回されないことです。1着軸として舟券を買う場合は、勝つための条件のチェックが欠かせません。

■展示の評価ポイントは選手それぞれ

ただ、スタート展示と同じく、周回展示はあくまでも参考データです。そのことを前提にしたうえで、1マークの動きをイメージしなければなりません。

ターンひとつを取っても、1600名の選手はそれぞれ身長や体重など違いがあり、ひとくくりにはできません。各自、自分の体型や実力に合ったターンを模索しています。

ターンに入るときの角度とスピードも違います。ターンマークの方に舳先が向いているからといって、それがベストというわけではありません。旋回半径を小さくしようとすれば、それだけ水のが大きくなり、どうしてもターンのスピードが落ちます。

ターンマークを外してでも、全速でブン回した方が良い場合もあります。どこに妥協点を見出すかです。

ターンスピード重視でも,旋回半径重視でも、早めに舳先が向けば、次の段階に進むうえで有利になるはずです。だから、ターンで暴れたり、ターンマークを外したりしないか、展示タイムや独自タイムなど、ターンマークの出口に関する要素に加えて、ターンマークに行くまでのスピードと角度にも注目する必要があるのです。